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読書の時間

2024年12月 1日 (日)

『読みたいのに挫折』 ~ 100年の孤独

名著を読んで途中挫折というのはよくあることだが、今回の読書会の課題書は40年前のノーベル賞受賞作品「100年の孤独」。 選択理由は読みそこなっていたノーベル賞本が、文庫の新刊として出版されたからということで飛びついた。 

読み始めると、3代に渡る一族の歴史ながら、系図でもないと同じ名前がズラズラ続き、現地の風習なども絡み、途中で訳が分からなくなる。

池澤夏樹は英語で本作を読み,以来「追っかけ」の読者になってしまったのだとか。 確かに、図書館には10冊近いマルケスの本が並んでいる。  読めないのは自分だけかと、落ち込んでいたら、会員の殆どが読めなかったというのでほっとした。 帯の宣伝文句は『聴け、愛の絶叫を。見よ、孤独の奈落を』

まんまと新潮社の口車に乗ってしまった!というのが実感。 

本書はマジックリアリズムと言いうらしい。

 

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書店のレジ前には山積みされたベストセラー。

 

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著者のガブリエル・ガルシャ・マルケス  (1928 - 2014)

 

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読めなかった慰めに酒が送られてきた。マルケスに乾杯!

2023年12月13日 (水)

『君はパレスチナを知っているか』 ~ 現代史を紐解くために

昔、「アラビアのロレンス」や「アンネの日記」が巷を駆け抜け、接してみても何かもやもやした疑問感が心の奥に蟠っていた。 本書を読んで、やっと落ち着くことができた。これは自分にとっての名著である。

昨今、昼夜を問わずガザ対イスラエルのニュースがもちきり。平和ボケの日本人も対岸の火事として構えている場合ではないのかも知れない。

  パレスチナの広さは日本の九州にもおよばず、「パレスチナ人」とよばれる人々は500万人くらいだと考えられる。だが、平均的パレスチナ人像を描くことはむずかしい。

かれらはアラビア語を話すが、皮膚の色はスーダン人のようにかなり黒い人から、北欧人のように真っ白な人までいる。目の色は。暗褐色、茶、緑、青、灰色など。毛髪には、直毛。ゆるやかなウエーブ、ちちれ毛があり、色も、黒、茶、赤、ブロンドなどさまざまだ。

目次:

1)イスラーム帝国とパレスチナ

2)シオニズムと近代反ユダヤ主義

3)大国のエゴイズム

4)失敗したイギスのパレスチナ支配

5)冷戦の中で生まれたイスラエル

6)「難民」から「パレスチナ」人へ

7)タカとハトとラビ

8)インテイファーダからパレスチナ国家独立宣言へ

しかも小学生でも読めるように丁寧に仮名が振られてある。 

最近、イギリスでは中東についての教育は控えているらしい(自国の黒い歴史にもかかわるからだろう)。 

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我が家の猫も読んでいる  (ほるぷ出版)  1997年には改も出版されている

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本当のアラビアのロレンスと出会ってみるのも面白い

2023年5月12日 (金)

『ミンゲル島』 ~ パムックの空想の島

トルコのノーベル賞作家、オルハン・パムックの新しい翻訳本: 宮下遼訳の「ペストの夜」が早川書房より出版された。 舞台はエーゲ海に浮かぶ「ミンゲル島」という架空の島であり、ミンゲル人も架空民族である。時代はオスマン帝国末期、アブデル・ハミト二世の治世(1876-1909)。

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その小さな島でペストが流行し、殺人事件なども起こる。 読者は催眠術にかけられたかのように、架空の島、架空の国家に引き込まれる。

 

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こんな風に、地図まで掲載しているから、素直な読者は騙されてしまう。

イスタンブルには「無垢の博物館」という作品と同名の博物館が存在し、主人公の部屋にベットや品々が陳列されている。あたかも登場人物たちが息づいているかのような雰囲気。 コーナーには世界中で発行されたパムック本の売店になっている。もちろん入場料は必要。ある意味で、彼の「遊び」に付き合うことになのるだが・・・それが楽しい。

 

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1952イスタンブル生れ。生粋のイスタンブルっ子、幼児期から「西の人」として成長。

2006年度ノーベル文学賞受賞

邦訳作品

わたしの名は紅、雪、白い城、黒い本、無垢の博物館、新しい人生、父のトランク、イスタンブル、僕の違和感、赤い服を着た女、等々。

 

 

 

 

 

2022年11月30日 (水)

『わたしの心のレンズ』 ~ 大石芳野さんの現場

フォトジャーナリストとして活躍している彼女の名前は認知していたが、著書は初めて読んだ。男女同権とはいえ、カメラの重さも平等。取材地は過酷な場所。戦禍の中で苦しむ多くの人びとに会い話を聞き、写真に収めてきた・・・。

ベトナム ~ アウシュヴィツ ~ カンボジア ~ 広島 ~ 長崎 ~ 沖縄 ~ ニューギニア・・・・

女性のハンディを背負いながら、女性特有の繊細さを武器に取材した愛おしい写真たち。心のレンズは曇っていなかった。

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コロナ禍での休息で現場の記憶を紡ぐという一冊をよみながら、師走を迎えることに。

2022年9月 5日 (月)

神谷美恵子の本

このところ、何かと不快指数が高く、努力とか忍耐では収まらない状態。そんな時はこの人の文章を読むに限る。まるで、上等なカウンセリングを受けた如く心が静まるのだ。 出会いは、まだ20代のころ友人から誕生日に「心の旅」をプレゼントされた。通勤電車の中で降車駅を通過するほど夢中で読んだ。その後、殆ど読破しているつもりだった。

先日、図書館で本書を見つけた。引用されているのは読んだ記憶があるものが殆どだったが、新鮮だったのは「神谷美恵子の本棚」と言う項目で彼女の愛読書とコメントと年代が明記されていることと、中井久夫氏の「神谷美恵子さんの『人と読書』をめぐって」である。

例えば、ハンス・カロッサを読んで:

医者を業としながら、この世界に呼吸していたカロッサというひとの存在が慕わしい。シュヴァイツアにないやわらかさと、陰影と渋味がある。『青年の秘密』を大枚230円で入手。あみものをしながら読む。こうしたぜいたくは何カ月ぶりであろう。私の心は久しぶりで俗世のわずらわしさから解き放たれ、無限の世界、詩の世界に遊び、歓喜の声をあげた。と同時に、眠っていた使命感、書かなくてはならぬ、という衝動がもくもくと起き上がって来る。

しかし、そのためにはどれほどの真実さが必要な事だろう。1950.09.18 36才

 

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みすず書房:神谷美恵子コレクション「本、そして人」

抱え込んで読んでいると、図書館から返却要望のメールが届いた。やはり、大枚はたいて買うべきなのだ。

 

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1914~1979  65才没

幼少期をスイスで過ごし、フランス語に親しむ。青年期に結核を患う。遅まきながら精神科医になり、二人の子供を育てながら、ハンセン病治療に関わる。 生活の為、アテネ・フランセでフランス語を教えた時期も・・・・。

 

2022年7月19日 (火)

『天皇はいかに受け継がれたか』 

タイトルには興味があったので、めくってみたが、一向に前へ進まなかった。 それと、学術会議をボイコットされた加藤陽子氏の著書だと誤解してしまったのだ。彼女は編集責任者であった。

古代、中世、近世、近代とに分かれ、それぞれの専門家が書いているのだが、暑さも相まって、途中でどうでもよくなってしまった。

女系否定と臣籍降下等々、国会議員たちのどのぐらいの人たちが本著を理解できるのだろうか?

 

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明日は図書館へ返却しよう。

2022年7月12日 (火)

『ボッコちゃん』 ~ 星新一の世界

蒸し暑く、外界は何かと騒々しい。こんな時はどんな本を読めばいいのか・・・。ハタと気が付いた。若い時から名前だけは知っていて読むことがなかった星新一のショートショートを見つけた。各章2~3ページの短文(掌編)である。

あっという間に物語は終わる。登場するのはロボットだったり、サルだったり、とにかく結末が早いのは読みやすい。現代版昔話的でもある。

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星新一(1926~1997):

父は星薬科大学・星製薬の創立者。本名の親一は「親切第一」の略だったとのこと。要望や作風とは裏腹に実生活でもギャグ連発の「奇行の主」の側面があったという。身長180センチ、小松左京によれば少年愛の傾向があり、一時はピーターを追いかけまわしたとか・・・・そんなところも興味深い。

湿度96%の日本の夏、いつの間にか冷房無しには生きられなくなった。電気が切れたらどうなる? ボッコちゃん助けて~。

 

 

2022年7月 2日 (土)

『ベストエッセイ 2021』 ~ 日本文芸家協会編

10年ほど前から、前年発表されたエッセイを文芸家協会が収録したものらしい。なんとなく図書館にリクエストしていたら,かなりの時間経過でやっと到着。 なんとまあ、作家・エッセイストと名の付く文筆家の多いことに驚いた。 おそらく文芸家協会会員の方々なのだろうと思うけれど中には髭の殿下のご長女のお名前まで、70名以上。

協会理事長の林真理子は好きでも嫌いでもないけれど、こんな言葉があった。

「いろんな生き方」の中には一応いろんなことを試してみる、という人生もある。・・・ここで、声を大にして言いたいのは、貧困にあえぐシングルマザーにだけにはならないで、ということだ。どうか女性が、しっかりとした経済的基盤を身につけて欲しい。女性がしっかり稼いでいれば、好きな男といつでも結婚でき、いつでも別れられる、という自由を手に入れられるのだ。

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気が付いたことは、投稿先が雑誌や新聞であるのに、天下の読売・産経掲載の作品がなかったことである(⋈◍>◡<◍)。✧♡。

 

 

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猛暑の中、元気が良いのはこの花だけ。

2022年4月23日 (土)

『教誨師』 ~ 堀川惠子の本  

「暁の宇品」(暁の宇品陸軍船舶司令官たちのヒロシマ)を読んで、著者の洞察力と取材力に敬服。広島生まれの広島育ち。大学も広島という著者の背景。他の作品も読みたくなって手にしたのが本著である。

「教誨」とは広辞苑によれば 1)教えさとすこと 2)受刑者に対して刑務所で行う徳性の育成を目的とする教育活動。宗教教誨に限らないとある。

外国映画などで、死ぬ間際に牧師が立ち会う場面がしばしば見受けられるが、相手が死刑囚ともなればどんな対応ができるのか、興味深かった。

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著者が取材してきたのは、14歳でヒロシマを体験し、50年間死刑囚との対話を続けてきた僧侶の渡邊普相(1931-2012)氏。

死刑判決受刑者は執行日まで拘置所に留め置かれ、面会や手紙などの外部のやり取りを厳しく制限され殆どを独房で過ごす。教誨師は唯一面会できる民間人であり、執行現場にも立ち会う。それも無報酬で。

受刑者の色々な例の中で、印象的だったのは「三鷹事件」の竹内景助の例である。昭和24年国鉄三鷹駅で起きた、無人電車暴走事件(線路わきで6名が電車の下敷きで死亡)。人員整理に反対する国労の犯行との筋書きで捜査。共産党員9名と非共産党員の竹内が逮捕。なぜか、竹内だけが死刑判決。最高裁の法廷は「八対七」の僅差で竹内の死刑判決を確定させた。一票を争う死刑判決。そのせいか執行はされず、脳腫瘍で獄死。

まだ記憶にある大久保清はいくら教誨を薦められても「自分は宗教は信じないから」と頑なに固持したという。

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読むほどに、深い人間の闇に吸い込まれる。

 

 

 

 

 

 

 

2021年9月21日 (火)

『イタリアの匂ひ』 ~ 須賀敦子

何事も億劫になって、外出もしたくないというのは単にコロナ禍のせいだけではなく、老境になったからではないかとつくづく思う。過去を振り返ることが多くなった。幼少期、親の事、青春時代、さまざまなことを想い出す。変貌してしまった過去の場所、逝ってしまった人のなんと多いことか。

20代の半ばに差し掛かったころ、フィレンツエに憧れてしばし滞在したことがある。三島や、あさま山荘、テルアビブ、ミュンヘンオリンピック事件、そして川端康成の自死等々日本のニュースとして印象深い。 散歩がてらの書店で手にした日本文学の訳本はまだ見ぬ須賀敦子によるものであった。

彼女の本は殆ど網羅していると思っていたのだが、 急に須賀敦子に逢いたくなって、図書館ライブラリーにアクセス。2冊が目に留まった。

 

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本著は川上弘美選の精選女性随筆集の1冊。

再び出会った須賀敦子、イタリアの香りが満ち満ちていて、懐かしい。 中でも後に夫になる、ペッピーノ氏に向けた私信は没後ならではの発表であろうが、とても純粋で繊細、まるでアンネの日記のような感じもする。 勿論、手紙はイタリア語で書かれたので、岡本太郎氏が翻訳している。

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1965年、須賀敦子編訳による「日本現代文学選」がイタリアで出版された。ジョルジョ・アミトラーノ(ナポリ東洋大学教授)によれば、

彼女は作家になるずっと前から、もともと作家だった。彼女が話すとき、それが日本語であろうが、イタリア語であろうが、あるいは英語であろうが、聞き手は同様に理解できることだった。彼女のストーリーテラーとしての才能が、優れた作家としての資質がすべて揃っていた。

私は日本文学の教師になって以来、「日本現代文学選」をつかっている。翻訳された言語はまだ時間の跡を見せないし、小説の選択も古臭くない。この本がまさに新鮮さに溢れている証拠だ。須賀さんによる、その短い解説は、あらすじを漏らさず、ネタバレもせず、ストーリーの文脈を説明し、理解を手伝うためのヒントを読者に与えている。

収録作品

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今はどこにでも苗が売っていて、すっかり馴染みになったバジルだが、「イタリアから苗や種を持ってきてもなかなか生育ができないのよ」・・・と言っていたことを想い出した。

 

 

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