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2021年9月21日 (火)

『イタリアの匂ひ』 ~ 須賀敦子

何事も億劫になって、外出もしたくないというのは単にコロナ禍のせいだけではなく、老境になったからではないかとつくづく思う。過去を振り返ることが多くなった。幼少期、親の事、青春時代、さまざまなことを想い出す。変貌してしまった過去の場所、逝ってしまった人のなんと多いことか。

20代の半ばに差し掛かったころ、フィレンツエに憧れてしばし滞在したことがある。三島や、あさま山荘、テルアビブ、ミュンヘンオリンピック事件、そして川端康成の自死等々日本のニュースとして印象深い。 散歩がてらの書店で手にした日本文学の訳本はまだ見ぬ須賀敦子によるものであった。

彼女の本は殆ど網羅していると思っていたのだが、 急に須賀敦子に逢いたくなって、図書館ライブラリーにアクセス。2冊が目に留まった。

 

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本著は川上弘美選の精選女性随筆集の1冊。

再び出会った須賀敦子、イタリアの香りが満ち満ちていて、懐かしい。 中でも後に夫になる、ペッピーノ氏に向けた私信は没後ならではの発表であろうが、とても純粋で繊細、まるでアンネの日記のような感じもする。 勿論、手紙はイタリア語で書かれたので、岡本太郎氏が翻訳している。

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1965年、須賀敦子編訳による「日本現代文学選」がイタリアで出版された。ジョルジョ・アミトラーノ(ナポリ東洋大学教授)によれば、

彼女は作家になるずっと前から、もともと作家だった。彼女が話すとき、それが日本語であろうが、イタリア語であろうが、あるいは英語であろうが、聞き手は同様に理解できることだった。彼女のストーリーテラーとしての才能が、優れた作家としての資質がすべて揃っていた。

私は日本文学の教師になって以来、「日本現代文学選」をつかっている。翻訳された言語はまだ時間の跡を見せないし、小説の選択も古臭くない。この本がまさに新鮮さに溢れている証拠だ。須賀さんによる、その短い解説は、あらすじを漏らさず、ネタバレもせず、ストーリーの文脈を説明し、理解を手伝うためのヒントを読者に与えている。

収録作品

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今はどこにでも苗が売っていて、すっかり馴染みになったバジルだが、「イタリアから苗や種を持ってきてもなかなか生育ができないのよ」・・・と言っていたことを想い出した。

 

 

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