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2019年6月10日 (月)

イスラエルにおける共生の明日

日本から遠くて遠い国、「イスラエル」の情報は少ない。 ところが、イスタンブル在住の2児のシングルマザーの友人がガザまで飛んで、FNNjpの記事を書いた。長年旅行社に勤務していたが、昨今のテロ事件で、日本人観光客が激減・・・・フジTVのNews Producerとして活躍、今回は初記事ということで、全文を掲載しました。 知性と体力に溢れ、たくましい彼女の生き方をいつも感心している。 

 

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ユダヤ教徒とイスラム教徒がともに働く「ソーダストリーム」

イスラエルのネタニヤフ首相が組閣に失敗した。総選挙期間中から、ヨルダン川西岸にあるユダヤ人入植地を併合する方針を明らかにするなど、パレスチナ危機悪化が危惧されていた中でのことだ。イスラエルは9月、史上初の再選挙を行うこととなった。


解決の糸口さえ見えないパレスチナ問題を抱えるイスラエルだが、実はユダヤ教徒やイスラム教徒がともに働いている企業がある。 自宅でも炭酸水を作れる機械のメーカーとして近年、世界一に急成長し、日本のテレビCMでもおなじみの「ソーダストリーム」だ。


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テルアビブから車で向かうと、その工場はガザ地区まで20キロほどしかない砂漠に突如現れた。周辺にはベドウィン(アラブの遊牧民族)の村があるだけの貧しい地域だ。失業率の高い地元ベドウィンの雇用に貢献しているだけでなく、工場には遠方からも多くの社員が通う。

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「この国にある衝突や紛争は、この工場では全く無関係なんだ」

ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区内にあった旧工場時代から働いている、パレスチナ人のマフムードさん(50)に話を聞いた。

「前の工場は近かったけど、今は、毎朝4時に家を出て夜9時に帰る生活を続けている。ここは一つの大きな家族なんだ。みんな仲良く、宗教や人種などによる問題など一切無い。家族のためにお金を稼がないといけないし、イスラエル企業で働くことに関して批判を言う人はいなかったよ。」

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工場内では異文化が共存すると聞き、ソーダストリームへの就職を希望したと語るイスラエル人(ユダヤ教徒)のガイ・ブリックマンさん(26)はこう言う。

「異なる宗教を信仰する人たちが隣同士に座り、一緒に働いている。今晩はここでラマダンのお祝いがあるし、いつも色々な宗教行事をみんなで祝っているんだ。ここで働き始める前は、パレスチナ人やベドウィンの友達はいなかったけど、一緒に働いてみて、彼らとの結びつきを感じるようになった。この国にある衝突や紛争は、この工場では全く無関係なんだ。」

 

CEO「平和や共存を達成するのは実はとても単純」ソーダストリームCEOのダニエル・バーンバウム氏は、いわゆるやり手だ。2007年にCEOに就任して以来、売り上げを約7倍の7億ドルに増やし、昨年ペプシコに32憶ドルで売却した。ニューヨークで生まれ、7歳からはイスラエルで育った彼は、ガザの住民に雇用機会を与えることで平和実現も可能だと熱く語る。

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「世界常識では、イスラエル人とパレスチナ人は憎しみあっている。しかし、ソーダストリームでは、皆が一緒に働き、子供同士を遊ばせ、互いの祭日を祝う形で共存が可能となっている。
イスラエル人とパレスチナ人を共に働かせることに対する批判は、聞いたことがない。共存や平和、幸せな生活を批判できるわけがないんだ。私たちは政治団体ではないから、誰が正しくって誰が間違っているのを論議することが仕事ではない。相手を自分と同じ『人間』と認めて接すれば、文化や宗教の差なんて、どうでもよくなるんだ。

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ここではまず平和が作られ、その過程で最終的にソーダができる。平和や共存を達成するのは実はとても単純だ。皆に敬意を表し、平等に扱うだけで十分なんだ。平等な給料と、昇進、雇用条件があれば、みんな仲良く幸せに働ける。今、ガザ地区の住民に現地提携の形で雇用を提供する新しいプロジェクトが進んでいる。ガザは経済活動が全くないテロ地区だから、ガザの住民たちに雇用の機会を与えたいんだ。彼らが豊かになれば和平が達成されるかもしれないしね。」

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ラマダン(断食)月が終わることを記念して、夕方行われたイフタール(日没後最初の食事)では、2000人以上の社員とその家族を含む約3000人が一堂に会した。ユダヤ教徒やイスラム教徒に加え、キリスト教徒やドゥルーズ派(イスラム教の一宗派)など、多種多様な宗教を信仰する社員が、自分の家族たちとともに同じテーブルを囲み、断食の時が明けるのを待った。
ステージに上がった人々は、ヘブライ語やアラビア語、それぞれの言語でスピーチを行い、巨大なスクリーンには、ヘブライ語とアラビア語で「恵み多い月ラマダン、おめでとう!」という言葉が交互に表示された。

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(インタビューする土屋とも江さん)

 

これまでのイスラエル取材では、激しいデモ衝突や、目の前でイスラエル警官に引きずられていくパレスチナの少年たち、互いに対する偏見からヘイトスピーチを繰り返す人々、エルサレムでは塀も柵も無いのに東西に分かれて住み、ほとんど行き来のないイスラエル人とパレスチナ人…そんな疎外感溢れる差別的光景ばかり見慣れていたため、今回の取材はまさに狐につままれたような経験だった。
『同じ釜の飯を食う』と言う諺をそのまま実践する人々を目の前で見ながら、イスラエルにおける共生の明日を夢見た。

(Reported by Tomoe Tsuchiya)

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