『てがみ』
敬愛する須賀敦子の私信となれば、覗きたい好奇心にかられる。 それも、活字ではなく、そのまんまだとしたら・・・あまりにも生々しくて、覗くことが罪悪感に苛まされるような気分になる。 もちろん、須賀が存命だったら、出版はされなかっただろう。没後20年という年月が、可能にした1冊なのかもしれない。
宛名は親子ほどの年の差のあるスマさんという画家(女性)。結婚相手のアメリカ人とともに、日本を離れていた。その間(1975-1997)の須賀から彼女への私信である。 自分は1970年代の数年を某夜学校で須賀からイタリア語を学んでいた。須賀の話すイタリア話にうっとりと聞き惚れていた時期に、この生涯の友、「スマさん」に出会っていたらしい。
写真なのに実物を読んでいる錯覚、誠実で、優しい・・・熱いものがこみあげてくる。「須賀先生、のぞき見してゴメンナサイ!」
今なら、手軽なメールに依存してしまうところ、当時は電話は高額、手紙が常套手段だったけれど、こうして作品にもなる「てがみ」の尊さを思い知らされた。 これもひとえに須賀敦子という作家なればこそである。
訃報を知ったのは新聞、悼む記事のスクラップが出てきた
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