イスタンブルが匂う ~ 『僕の違和感』 早川書房
著者のオルハン・パムクはノーベル文学賞受賞者、それゆえ日本でも翻訳本が手に入る唯一のトルコ文学者。 パムクは生粋のイスタンブルっ子で西洋の文化のなかで過ごしてきた。 本作品にはイスタンブルの街のメイン広場や路地に至るまで、イスタンブルの香り満載、馴染みの通りを地図でたどると観光とはまた違った「歩き方」ができる。
時代背景は1950年代から2012年まで、主人公は地方から仕事を求めてイスタンブルへやってきた。父親とともに、一夜建ての家(Gece Kondu)に住みながら、ヨーグルトやボザの呼び売りをして糊口を凌ぐ。 いつの間にか巨大化していくイスタンブル。
旧ビザンチン帝国の文化と遊牧民文化が混合した街の喧騒と匂いが手に取るように感じられる。 イスタンブル愛好者にとってはたまらない一冊
★訳者は新進気鋭の若手トルコ文学者:宮下遼氏
雑穀(ブルグルと呼ばれる穀物、粟や大麦など)を発酵させたものから作られる不思議な飲料ボザはシナモンやヒヨコマメの粉で飾られる黄みがかった濃度の濃い飲物。甘いような酸っぱいような何とも表現しにくい味のするボザは冷たい飲料で冬の代表的な飲物とされています。ボザは単独で飲むものであり、決して食事時に飲まれる飲料ではない。
ボザジと呼ばれるボザを売り歩く人が寒い冬の夜、「ボ~~~~ザ~~~~」と独特の声を張り上げ、木の樽を肩から下げて昔ながらの商法で街を練り歩く。ボザだけを売るボザ店というものや小袋入りのインスタントボザもスーパーで販売されている。 (photo by JP-TR)
ゲジェコンドゥ(gecekondu): 一夜建ての家
他人の私有地や公有地に許可を得ないまま建てられた不法建築のトルコにおける総称。一夜にして建築したかのような非常に粗末なバラックを指すものであったが、現在では建築業者が施工した鉄筋コンクリート建ての建築物もごく普通に見られる。
« 3・20 代々木公園 ~ さようなら原発! | トップページ | コレハ何の花? »
「読書の時間」カテゴリの記事
- 『ミンゲル島』 ~ パムックの空想の島(2023.05.12)
- 『わたしの心のレンズ』 ~ 大石芳野さんの現場(2022.11.30)
- 神谷美恵子の本 (2022.09.05)
- 『天皇はいかに受け継がれたか』 (2022.07.19)
- 『ボッコちゃん』 ~ 星新一の世界(2022.07.12)
読了した老姉は「つまらなかった!」と言っておりました。
残念ながら、イスタンブルに愛着を持たな人にとってはそうかもしれません。
投稿: elma | 2017年4月 6日 (木) 12時31分
小説なんですね。すてきな本をご存じですね♪
投稿: こはる | 2017年4月 5日 (水) 18時00分