『命の格差』 ~ 師岡カリーマ
本日の東京新聞「本音のコラム」のコラムニストはエジプトと日本を祖国に持つ師岡カリーマ氏。 NHKワールドのアラビア語アナウンサーでもある。
論調は日本社会を冷徹に見つめているとのことだが、現地の厳しい現実を知ればこそ平和ボケの日本人には都合が悪いのだろう。 こういうコラムがあればこそ、東京新聞を読む気になるのである。
アジアと欧州にまたがるイスタンブールのナイトクラブで、新年を祝う人々を狙ったテロが発生、外国人を含む39人が死亡した。欧米メデイアは現場からの実況を交えて長々と報道。職探しの労働者など28人のバグダット市民が死亡したテロ事件とは扱いが違う。 最近まで安全だったトルコと、テロが多発するイラクでは、事の重大さが違うと言ってしまえばそれまでだが、ある町の日雇い労働者とべつの町のクラブ客では、命につけられる値札が異なるという現実は、理屈抜きに悲しい。
シリア戦争のニュースが日常化するとともに、人的被害に対する世界の関心は一時薄れた。アレッポ市民などの苦難に再び注目が集まったのは、ロシアという欧米にとってたたきやすい悪者が前面に出てきてからだ。一方、米英の同盟国が、米英の武器を使って主導するイエメン紛争の被害者の姿は、ほとんど報道されない。餓死した幼児は一万人を超え、立てないほど痩せた子供たちが飢えや病と闘っているのに、世界は見て見ぬフリをする。
パリでは風刺週刊誌が襲撃された時は、デモ行進した各国首脳たち。その半年前、ガザに対するイスラエル軍の攻撃で二千人を超えるパレスチナ人が死亡した時、彼らはどこにいたのか。命の格差は、回り回ってテロを育む。諦めも慣れもしたくない。
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