『患者必読』 ~ 新見正則 (朝日新聞出版)
著者はイグ・ノーベル賞受賞のドクター、 医者の僕がやっとわかったことという副題がついている。 受賞対象は心臓移植をしたマウスにオペラ『椿姫』を聴かせたら何も聴かせないマウスより平均40日も心臓が動き続けた(他にもいろいろ試したが椿姫がマウスが心地よいと感じる音だと推測される)。
奇想天外なことを期待して読み始めると極端な延命のノウハウなどではなく、医学の良識が分かりやすく述べられている。 まずは老化を受け入れる。 老化を病気と勘違いして、薬で治そうとするのは危険。
大学教授や院長やその道の専門医が必ずしも名医とは限らない。手術をするだけなら人柄性格は関係なく、手術が上手ならそれでいい。命に係わる病気の時は人生観を持っている人の方が信頼できる。医者を決めるのは、結婚と同じ、波長が合う医師が自分にとっての名医。
新薬に安全性を求めない、本当の人体実験は薬が売り始められてから開始される。がんになる可能性を引き受けるのなら喫煙という選択もある。医療は壮大な人体実験であるが、近藤誠医師のようにその人体実験に加わらない選択肢もある。
結論は医者も病院も薬も「縁と運」ということであろうか? 患者として読んで良かったと思える良書であった。 それでは、椿姫のCDを聴きながら深~い眠りに
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