藤沢周平 父の周辺 ~ 遠藤展子著 (文芸春秋社)
ぶらりと立ち寄った大泉学園の古書店「ポラン書房」で手にした1冊。 藤沢文学のファンではなかったけれど、初夏に庄内を旅し、鶴岡では藤沢周平記念館、彼が最初に教鞭をとった素朴な湯田川温泉、藩校など、作品の原風景に触れたせいか、親しみを覚えた。
以前から写真で見る周平の風貌からは高潔さと東北人らしい実直さが伺われたが、愛娘を通した彼はかなり優しい人で子煩悩であったらしい。 外面は良いけれど、東北人のいなかっぺで、何にでも醤油をかける、夏はステテコとシャツに団扇姿、母との会話は「あ」「い」「う」「え」「お」だけですんでしまう。けれど、母と私をしっかり観察していた、とのこと。
著者は生母を亡くし、ママハハに育てられるのだが、これがなかなかの肝っ玉母さんである。幼い著者が「ねぇ、ママハハって何?」と問うと「ママハハっていうのはね、ママと母の両方だから、普通のママより二倍すごいのよ」と答える。 淡々と書かれていて好感が持てる。
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やはり周辺に存在した人でないと、その人の周辺のことは書けませんね。鶴岡の記念館には大泉の質素な書斎がそのままに復元されていました。
投稿: elma | 2012年9月19日 (水) 19時59分
これ、読みました。よかったです!
藤沢周平の小説に慰められたという人、多いです。
明るいものはむしろ少ないのに。
投稿: こはる | 2012年9月18日 (火) 21時15分