ポーランドの詩人 ~ シンヴォルスカ
1996年度ノーベル文学賞受賞者、ポーランドの詩人、ヴィスワァヴァ・シンヴォルスカ (1923~2012)が2月1日、肺がんにより死去という記事が目に留まった。 彼女の詩は読んだことも、名前の記憶すらなかったが、88年という歳月を過酷な歴史の中で過ごしたポーランドの詩人、ということだけでも深いため息が出る。 作品群は詩歌のモーツアルト、深刻な主題にユーモアを持って取り組むなどと評されている。 早速その1冊、工藤幸雄訳「橋の上の人たち」を開いてみることに。 出版社は書肆山田
たばこを指から離さない愛煙家だったそうであるが、そのエレガントな風貌にしばし見とれてしまった。 (写真はノーベル賞受賞記念切手)
タイトルの「橋の上の人たち」は歌川広重「名所江戸百景」の「大はしあたけの夕立」に基づいているという興味深い作品。
他に21作品が集められている。時代の子ども/世紀のたそがれ/ヒットラーの最初の写真/偉人の家/埋葬式/方舟へ/拷問/可能性/われらが祖先の短な一生/死者たちとの謀議/奇跡の青空市/一粒の砂粒のある光景/拷問/始められた説話・・・・ポーランドの現実が星のように散りばめられている。
橋の上の人たち
・・・・ ヒロシゲ・ウタガワとか名乗る反逆者の力量によって(その人も遠い昔に去るべくして去ったが)時間は躓き倒れたのだ。
あるいはこれも単に無意味な戯れか、たかだか二、三の銀河系に亙る規模のいたずらなのかも そのどれにせよ念のため 蛇足を足せば、次のようになる -ー
以前からここでは絵にほれ込んで 高く評価し、このちっぽけな絵に 後代まで感嘆し、感動すべきだとされてきた。
それだけだは満足しない人たちもいる。 彼らは耳に雨脚の音さえ聞き取り 肩や背に滲み入る滴の冷たさを覚え 橋と人々を眺めて そこに自らの姿を見るように思い 行き着く先のないこの駆け足の 終わりのない道を、いついつまでもと そしてその思い上がりのなかで思い込む これがそのままの現実であると・・・・
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