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2011年11月13日 (日)

「フランス流 乳がんとつきあう法」 ~ 木立玲子著    (毎日新聞社)

現在乳がん治療中の友人が「感動大安売りの闘病記が苦手だった私の認識を覆してくれた本」というので、手にした1冊。そう、闘病記ではなく、ジャーナリストの目を通して、フランスにおける「乳がん」医療制度がよく解説されていて日本との相違に驚く。

執刀医は□病院の○先生ではなくて、患者が病院を選び、執刀医はその病院で施術。術後1週間も過ぎると病院から療養所へ移され、社会復帰を目指したリハビリを行う。主治医とはいつでも連絡を取れる体制になっていて、療養所も健康保険払い戻しの対象。70年代からパジャマを着ていると病人気分が抜けないから回診に支障をきたさない範囲で普段着着用を奨励する医師が増えてきた。療養所で一番混む場所は美容室。

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乳房再建手術や人口乳房購入の処方箋も担当医が書き、代金は健康保険で払い戻しされる。パリには乳がん患者を顧客にした国家認定の整形器具販売店が4箇所もあり、外国からの客も多い、新製品の紹介にあたっては乳房切除を受けている患者達がボランテイアをしている・・・・・と興味深い。

「フランスで生活して、一番理解に困ったのが核に対するフランス国民の意識の問題であった。日頃はチーズやワインの数に匹敵するほど意見が分かれるのに、こと核の話になると政府はエコロジストを除いて突然、超党派になり、日頃の理窟屋たちが駄々っ子みたいに、まるで嫁に親兄弟の悪口を言われた時の亭主みたいに理性を失う」と言う一節もあり、 「ヒロシマ・ナガサキを経験したのに日本はどうして原発を持ったの?」と聞かれて上手く答えられない日本人が重なり合う。

そして、登場するのはラジウム発見者でパリに移住したマダム・キュリーとアウシュヴィツから奇跡の生還を遂げ、厚生大臣も勤めたシモーヌ・ヴェイユ、乳がん温存療法のパイオニア、ベルナール・ピルカン教授。 3人の偉業はフランスを女性の権利先進国に導いた。異国で闘病しながらもこんな本を書けてしまうジャーナリスト魂の凄さ、「乳がん」をとおしてフランスという国が見えてくる。

Rose_2著者は国営ラジオフランスでプロデユーサー等を務めた後、フり-ジャーナリストとして活躍。残念ながら2006年11月ガンのためパリで没(52歳)。本書は1999年発行、他に「パリのおっぱい日本のおっぱい」「きままにフロムヨーロッパ」等がある。 東北は青森の出身。

 

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