「秋の四重奏」 バーバラ・ピム著 みすず書 房
「秋の四重奏」(Quartet in Autumn) 久しぶりにイギリス文学を堪能。 背景は1970年代のロンドン、定年間際の職場同僚である男女4人。彼らにまつわる人間の心のうちを丁寧に描写、かゆいところに手の届くような表現に引き込まれる。 乾いた人間関係や教会のイベント、神父の登場がいかにも英国風。 初老を感じる読者にはピンと思い当たることも多いごくごく普通のことを、著者の鋭い人間洞察で小説にしてしまうところがスゴイ。 青春真っ只中の方々には理解できにくいと思うけれど、孤独な晩年になって読む珠玉の1冊かもしれない。 その描写力には須賀敦子を感じた。
カバー画はシッカートの「エアハート嬢の到着」、何故この絵なのだろう・・・
著者Barbara Pym(1913-1980)は作風から19世紀のオーステンに似てるので、現代のオーステインと言われ、古いという評価で長期間出版を拒否され続けたが、本書により復活、以後さらに6冊発表したそうである。
訳者の小野寺健氏はあとがきで、「秋の四重奏は、低くしずかに奏でつづけられている。耳のわるい人には聞こえないだけで」と結んでいる。
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コメント
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しっかり定年になってからじっくり原書で読まれても良いのでは?
図書館で「よくできた女」(Excellent woman)を待機中です。
投稿: elma | 2011年9月20日 (火) 15時19分
書評が気に入りました。また、青春まっただ中をはるかに過ぎて、まさしく登場人物達と
同世代にさしかかった年代ですので、一度読んでみたいと思います。イギリス文学も
久々なので興味深いです。四重奏が聴こえるかどうか、分かりませんが、楽しみです。
さて、定年を前に片づける仕事が一杯で果たしてゆっくりイギリス文学を楽しめるかどうか
が問題ですが。ひとくぎりついたら、図書館で探してみます。
投稿: Junnishi Junko | 2011年9月19日 (月) 23時26分